川崎市麻生区の地域情報紙「メディ・あさお」です
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メディ・あさお210号(2019年5月25日発行)

【あさおヒューマン】山ゆり交通事業運営委員会会長・岡野幸雄さん

 急坂が続く高石の交通不便地域の住民たちにとって貴重な足となっている、高石団地と百合ヶ丘駅を結ぶコミュニティバス「山ゆり号(3面記事参照)。コミュニティバスの構想が持ち上がって以来、運動・運営をリードしてきた運営委員会の会長、岡野幸雄さんを、多摩区との区境に近い高石の自宅に訪ねました。
 「ことし11月で90歳になります」という岡野さんは、宮崎県都城市出身の九州男児。1945(昭和20)年、16歳で終戦を迎え、終戦後は大学を出て中学校の教員に。1952(昭和27)年には、すでに上京していたお兄さんに勧められて川崎市に移り住み、さらに小学校の教員免許も取得して、東柿生小学校で定年を迎えるまで、学校教育ひとすじに歩んできました。
 そんな岡野さんが高石に越してきたのは1965(昭和40)年の末のこと。市営の建て売り分譲住宅の抽選に当たったためでした。「当時、今の新百合ヶ丘駅のあたりはまだ駅もなかったし、草ぼうぼうで、こんなところじゃダメだって言うんで、高石にしたんです」と言いますから、隔世の感があります。
 しかし、入居の際に「この辺りには計画道路が通り、バス停ができる」と言われていた計画道路は一向に話が進みません。最寄り駅の読売ランド前駅まで、狭い急坂の道を上り下りしての通勤生活を続けながら、岡野さんは「このままじゃダメだ」と思い続けてきました。
 時代も平成に変わって1998年、すでに退職していた岡野さんは水暮町会の会長に。これを機に、岡野さんはコミュニティバスの実現に向けて動き出します。周りの町会や自治会と一緒に協議会を立ち上げ、ルートや車両を変えながら何度も運行実験や試行運行を行い、2011年、ついに山ゆり号の本格運行にこぎ着けました。同年、岡野さんは市の地域功労者賞に選ばれています。
 山ゆり号に向けた動きは、メディ・あさおでもたびたび記事にしています。取材の際、岡野さんが常に口にしていたのが「今は元気な人でも10年後、20年後にはこの坂道に苦しむことになる。10年後のことを考えて、コミュニティバスを通そう」ということでした。
少子高齢化や空き家などの問題が顕在化した今ならともかく、20年前にはこれは相当に先進的な考え。岡野さん自身、「当時は言われましたよ、『何言ってんの、車があるじゃないか』って」と振り返ります。「でも今では、感謝もされるようになりましたね」。
 「実践行動する人がいないと、住民運動は上手くいかない。でもリーダーがひとりでどんどん先に進んでいくようでもダメ。協議会のような団体を作り、地域のみんなで1段ずつ階段を上っていかないと。そのためにはリーダーがどれほど自分を捨てられるかが大事」と言う岡野さん。ゆっくりと、しかし確実に山ゆり号という花を咲かせたその言葉は、説得力にあふれていました。

(2019年5月25日号掲載)

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